ECILA RIP

思い出したように何かを書き留める

MMORPGから学ぶゲームデザインのエッセンス: 黒い砂漠

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気力があればシリーズ化していきます

皆さんお久しぶりです。

僕はゲームが好きです。PCゲーム、延いてはオンラインゲーム、MMORPGが好きです。過去の僕のMinecraftサーバーの開発配信などを見たことがある人は、薄々気づいているかもしれません。

思えば、自身が小学5年生の時(今からなんと11年前!)にマビノギをプレイした時から、MMORPGの作り出す世界に魅了されていたと言っても過言ではありません。MMORPGを題材にしている小説及びアニメ、ソードアート・オンラインにより、そのジャンルを知った人も少なくは無いと思います。

私はね、キリト君。まだ信じているのだよ───どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと───・・・・・・

この台詞を耳にした時、なんとも言えないノスタルジックな感覚が浮かびました。目を閉じれば、小中学生の時のゲームであれ、ゲームの町並み、音楽、そこでの出会いなどを鮮明に思い出すことが出来ます。僕にとっては「どこか別の世界には、本当にエリン*1が存在する」のかもしれません。

閑話休題

MMORPGというものは、一旦ハマってしまったら抜けれなくなる、それこそソロプレイのRPGが一生出来なくなるレベル、の中毒性があります。

そのレベルの中毒性を生み出すようなゲームシステムが根幹にあります。そして個々のゲームシステムは、そのMMORPGが織りなす世界観において有機的に繋がっています。これを「ゲームデザイン」と呼ぶことにしましょう。*2

例えば、「プレイヤーは魔法を放つことができる」「プレイヤーが魔法を放つにはマナというリソースが必要」というのは個々のゲームシステムです。これらのゲームシステムをより彩り、他のゲームシステムと繋げるためにゲームデザインが求められます。「この世界は夜間にマナが大気中に漂っていて、夜間のマナ自然回復量が多い」などのように。もっとざっくり言えばゲームシステムは点で、ゲームデザインはそれを繋ぐ線かもしれません。どう言えばよく伝わるんでしょうか、よくわかりませんが。

この「MMORPGから学ぶゲームデザインのエッセンス」では、その「ゲームデザイン」に焦点を当て、そのゲームが「なぜ面白く」「多くの人に楽しまれ」「サービスが続いているのか」というのを分析して行きたいと思っています。


それではやっと本題です。今回は「黒い砂漠」というゲームに焦点を置きたいと思います。

黒い砂漠がどういうゲームなのか……みたいな話はあまりしません。*3

黒い砂漠を初めてプレイすると「戦闘がサクサクで楽しい」「グラフィックがキレイ」のような感想を抱きます。しかし、プレイを進め「このゲームの真理」に近づく*4と、このゲームの真の凄さが分かります。

このゲームは、「初心者でもお金が稼ぎやすい」のです。言い換えれば「ゲーム内の経済が異常に活発」なんです。


MMORPGでのお金稼ぎ(金策と言います)は、大きく二種類あります。モンスターを倒したドロップとしてお金を入手、クエストの報酬でお金を入手、などお金がシステムからプレイヤーに渡るパターン。そして、プレイヤー同士の取引でお金がプレイヤーからプレイヤーに渡るパターンです。どのMMORPGも、この2つの金策をどのようにデザインするかによって、プレイヤーの快適度が変わってきます。

前者の「システムからプレイヤーにお金が渡るパターン」を見てみましょう。もし、このパターンに重きが置かれていた場合、初心者でも頑張って数をこなせば簡単にお金を稼ぐことが出来ます。良心的な仕組みに見えますが、それ以上の問題が付きまといます。プレイヤー個人個人で見ると、お金が沢山あってハッピーですが、ゲーム全体で見ると、ゲーム内に流通しているお金が時間経過と共に膨れ上がってしまいます。現実世界で「貧乏で困る?ならお金刷りゃいいじゃん」という解決策が愚策であるのと似ている結果に陥ります。

このような状況は「インフレ」と呼ばれます。物価が上がったりと大変です。しかし、現実世界とMMORPGのゲームの世界で違う点があります。神の存在です。現実の世界規模でインフレが起きてしまった際に、神が出てきてよしなに調整してくれる訳ではありません*5。一方でMMORPGには神がいます。運営及び開発です。「なんかみんなお金いっぱいもってるからお金を消費するようなコンテンツを追加しよう」みたいな感じでよしなに調整します。アップデートによって、その世界の流通貨幣量をうまくコントロールしようとします。

つまり、「システムからプレイヤーにお金が渡るパターン」では、その逆である「プレイヤーからシステムにお金が渡るパターン」も考えなければいけません。一方で、その両者は全くの対称的なものであるかと言われると違います。「モンスターを倒したらお金が貰える」⇔「モンスターに倒されたらお金が減る」という訳には行きません。大体の場合は「武器の修理にお金が必要だよ」「武器の強化にお金が必要だよ」「家をもつのにお金が必要だよ」のように、非対称的な「システムがお金を回収する仕組み」が用意されます。もっと言えば100%この仕組みに頼ろうとすると、いつか破綻するから「常に運営が手を加え続けなければいけない」ものになります。「武器の修理もいい、強化も終わった、家も持ってる」というプレイヤーが現れてしまったら、更に回収の仕組みを追加しなければいけません。一生いたちごっこです。

後者の「プレイヤーからプレイヤーにお金が渡るパターン」はどうでしょうか。「モンスターからドロップしたアイテムをフリーマーケットのように他のプレイヤーに売りつける」ことでお金を得る方法です。これは非常に理想的な仕組みです。なぜならば、前者の仕組みと違って、運営が常に手を加える必要が無いからです。取引材料になるものの需要・供給により価値がプレイヤー間で付けられ、プレイヤーからプレイヤーにお金が渡る以上、ゲーム全体の流通貨幣量が変化しない(というより増えない)からです。

しかし、理想は理想です。この仕組みをうまく回すには「需要・供給」が重要になります。このようなシステムでは「入手が困難なもの」か「入手は楽だけど個数集めるのが面倒なもの」のような、需要が極端に高いものしか流通しません。例えば、初心者プレイヤーが初めてログインし、駆り出した草原で入手したなんの変哲も無い「草」には価値がありません。これでは、このシステムの恩恵を受けれるプレイヤーが非常に限られてしまいます。プレイヤー間取引がエンドコンテンツになってしまいます。

多くのMMORPGでは、この2つのパターンの金策をハイブリッドしています。序盤のプレイヤーはクエストをこなしたり、モンスターを倒したりして少額なお金を得て、強くなったらレアドロップのある地域に行き、レアドロップが出たらプレイヤー相手に売り、大きなお金を得る……のような、自分の強さと経済力によって金策のフェーズ分けがされています。


しかし、黒い砂漠は違います。(やっと黒い砂漠の話だ!)

いや、違います、というのも違うのですが。

黒い砂漠にもそのような「王道の金策フェーズ」も勿論あります。それに加えて「あるゲームデザイン」が根底にあります。

黒い砂漠には、装備品強化システムがあります。武器や防具を強化することが出来るゲームシステムです。一方で、レベルを上げることによる恩恵はあまりありません。つまり、プレイヤーの強さ≒装備の強さなゲームです。更に、武器や防具を強化するのには、レアドロップである「強化アイテム」が必要です。ここまで聞くと「じゃあその強化アイテムってのがプレイヤー市場で取引されているんだね?」となる訳ですが、それだけに留まりません。装備品の強化は非常にシビアです。より強いものへ強化しようとすると、失敗が発生し、リスクを被ります*6。強化成功率を上げる手段が一つだけ存在します。それは強化に失敗することです。これは通称「スタック」と呼ばれ、失敗回数は蓄積されていきます。スタックが貯まれば貯まるほど*7、強化成功率が上がります。効率よく強化を行うには、どうでもいい装備品を強化し、失敗を繰り返し、スタックを貯めて、本当に強化したいものの強化に入る、というフローを踏む必要があります。(えげつな!)

どうでもいい装備品にも需要がある訳です。そして、そういう装備品はモンスターから多数ドロップします。初心者が最初に駆り出した平原でドロップした初期装備みたいなよわよわ装備にも、装備を強化したい人からしたらとてつもない価値がある訳です。プレイしてみると分かるのですが、この手法の金策はかなり長い間有効ですし、腐ることがありません。

長々とまとまりの無い文章を垂れ流してきたわけですが、黒い砂漠の凄い所は、

  • 敵との戦闘はレベルより装備重視
  • 装備重視ということは装備強化が必要
  • 装備強化を効率化するにはいらん装備が必要
  • いらん装備は割と色んなところで手に入る
  • プレイヤーマーケットでいらん装備が死ぬほど流通する
  • 初心者でもいらん装備を売ることが出来、金策になる

というフローが確立され、長い間保たれていることにある訳です。あれ、この結論のリストだけで良くない……?


「こういう仕組みがあったら面白いんじゃないか?」というゲームシステムありきで、ゲームを見たり、作ったりしてしまうことが多々ありますが、このような事例を見るとゲームシステムを有機的に繋ぐゲームデザインの大切さが少しわかってくる気がしませんか?

Minecraftのマルチサーバーでもそうでした。「プレイヤーが魔法撃てたら楽しいと思います!」という要望が来ても、それを実装し表舞台に出すには「魔法を撃つため」のゲームデザインが必要な訳です。そりゃSheepServerにも魔法が来なかった訳だ!*8

ーー読み返してみると何を伝えたいのかよくわからないポストになってしまいましたが、記念に公開しておきます。

*1:マビノギの世界

*2:勝手に名付けた

*3:調べりゃいいしなんなら今からインストールしてくりゃいい

*4:本当に近づいていたかは知らんが

*5:見えざる手とは

*6:耐久値が減るんだけどね。

*7:というのも厳密には違いますが、分かりやすいようにこのようにしておきます。

*8:諸説ある